(画像は展覧会のフライヤーです)
本日2/2、神戸市立博物館にてターナー展を鑑賞しました。この展覧会は2014/4/6まで神戸市立博物館にて開催されます。いま詳しい内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。
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「英国最高の風景画家」とのキャッチコピー。私もターナーが英国を代表する風景画家というのは知っていたし、私もスケッチで風景をよく描くから、得られるものがあればいいなあと思って見にいった。
しかし14歳にしてロイヤル・アカデミーの美術学校に入学を許可されたターナーの絵は、初期から美しい絵だった。初期の油彩画「月光、ミルバンクより眺めた習作」は月明かりとそれに照らされた景色と夜空の色合いが絶妙であった。また水彩で描かれたいくつもの風景画も柔らかさを感じる絵で、特に「ヴァル・クルシス修道院の廃墟、遠方にディナス・ブラーン城」はなんだか風景全体が廃墟のようでいいなあと思った。
やがてターナーは「崇高」を追求するようになる。自然の「崇高さ」をとことん表現しようとする。「ナントレ湖越しに望むア・ガーン山、遠方にスノードン山」なんて色彩を抑えながら、立体感を出し、荒涼とした感じが出ていていい。そのほかの作品を見ていても、より厳しい自然へ入っていって、より崇高な自然の美を追求しようとするターナーの姿勢が伺える。
ターナーは歴史画も描いているが、それらを見ると自然の中のちっぽけな人々という感じがしてならない。
ターナーはイタリアなど、ヨーロッパ各地を旅行し、絵に描いている。キャンバスに描いた大きな作品もいいが、水彩の小さな風景画もいい。私は展示室に並んだ小さな風景画を見てまわると、名所めぐりをしているような錯覚に陥った。
今回私がもっとも感銘を受けた絵は「レグルス」だ。古代ローマの将軍マルクス・アティリウス・レグルスを主題とした絵で、レグルスが瞼を切り取られ陽光に当たり失明したという伝説から、画面をまばゆいばかりの陽光で切り裂いている。あまりにも光にあふれていて、私は圧倒されるばかりであった。
ほかに「海の惨事」(別名「難破した女囚船アンピトリテ号、強風の中で見捨てられた女性と子どもたち」)も印象的だった。未完の絵だが、すべてが木端微塵になったような絵だ。
そしてターナー最晩年の作品「湖に沈む夕陽」、抽象画のようなこの絵は、何を描こうとしたのかわからないが、橙色に包まれた不思議な絵として心に残る。
私ももっともっと絵を、美術をつきつめたい、そう思って会場をあとにした。
この日、博物館近くの神戸中華街では春節祭が行われていた。鑑賞後はそちらへ向かい、屋台で食べ歩きしたり獅子舞を見たり、充実した一日だった。