12/9に国立国際美術館にて「エル・グレコ展」「宮永愛子 なかそら」を鑑賞しました。この展覧会は12/24まで国立国際美術館で開催されます。
私のブログの読者からのご要望により、今回から展覧会フライヤーが手に入った場合はその画像をここに載せることにしました。
いま内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。
-------------------------------------------
おそらく今年最後となるであろう美術館での美術鑑賞は、寒風吹きすさぶ中、国立国際美術館へ行って鑑賞してきた。晴れていたのが救いだったが。
まずはスペイン絵画の巨匠、エル・グレコ展を鑑賞。没後400年を迎えるとのことでこの展覧会が大回顧展だという。なんでも11/30にエル・グレコ展の入場者数が10万人を突破したとかで、入場制限でもかかっているのかと思いきや、並ぶこともなくすんなり展示室に入れて、混み具合もそれほどでもなかった。
展示では肖像画も多く並べられていて、例えば「芸術家の自画像」は抑え気味の色彩に、こちらを真っすぐ見つめる目が良い。聖書に出てくる聖人も肖像画のように描かれていて、それらも存在感がある。
でも私が気に入った絵が多かったのは、劇的な表現と構成で描かれた宗教画である。なかでもスペイン国王フェリペ2世が最後の審判の裁きを待つという主題の「フェリペ2世の栄光」は、多くの人物たちの躍動感溢れる描写、そして上部の天上世界のあふれる光が素晴らしく今回見た中で一番好きな絵である。また「聖衣剥奪」の積み上げられたような群像の表現、「キリストの復活」の縦長の画面に人々の間から昇っていくようなキリストという構図も印象的である。そして高さ3mを越す祭壇画の大作「無原罪のお宿り」は、人々が天使になり天へ昇っていくような、すべてが空の高みへと昇っていくような世界が描かれていて迫力があった。
続いて「宮永愛子 なかそら」展を鑑賞した。宮永愛子は主としてナフタリンを用いて作品を創っている。ナフタリンは常温で昇華するため最初の形が保たれず、透明ケースに閉じ込められた作品たちには静けさ、はかなさが感じられる。
今回は6点が展示されており、なかでも「なかそら―空中空―」(正確には、右側の「空」の字は鏡文字)はナフタリンで創られた蝶がいくつも配置され、ある蝶は少し羽が欠け、またある蝶は羽がだいぶ崩れていて、はかなさを強く感じた。万物は移り変わっていく、そういうことがよく表されている作品だと思った。スケールは大きいのだけれども、繊細。宮永愛子の作品からはそんな感じを受けた。ちなみに「なかそら」というのは宮永の造語で、古語に「なかぞら(どっちつかず、心が落ち着かないさま)」という言葉があるがその類似語らしく、宮永の作品の状態を表している言葉のようだ。
良質な展覧会を2つ鑑賞することができてよかった。
JUGEMテーマ:
展覧会