8/14に
京都国立近代美術館にて「視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション」展を鑑賞しましたので感想を書きます。この展覧会は2011/9/4まで京都国立近代美術館にて開催された後、2011/9/17から12/11までDIC川村記念美術館で開催されます。いま内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。
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モホイ=ナジ・ラースロー。欧米などでは従来ラースロー・モホリ=ナギと呼ばれてきたが(私も学生時代はモホリ=ナギと読んでいた)、この展覧会ではモホイ=ナジの出自であるハンガリーの姓名順と発音に従ってこう表記している。
ハンガリーで生まれたモホイ=ナジはその後オーストリア、ドイツ、オランダ、イギリス、アメリカと世界の都市を転々としながら、新たな芸術の創造に生涯を捧げた。それは絵画、写真、彫刻、グラフィック・デザイン、舞台美術、映画と実に多岐にわたっている。
展示作品からはあまりの幅広い活動ぶりに、ただただ感嘆するしかなかった。
その芸術理念が後世に大きな影響を与えたというのも納得できる作品群だった。
気に入った作品をいくつか。
ハンガリー時代の絵画「風景(オーブダの造船場の橋)」「工場の風景」はかげりのある、重厚な雰囲気を漂わせる油彩画である。
ドイツへ移ってからは構成主義的な作品を制作するようになったが、その中では「円と面」「交差する面」「面とストライプ」「無題(構成)」といった一連の小さな版画作品に構成の美しさ、図形の線の繊細さ、まるで宇宙に図形が浮かんでいるような美しさを感じた。
そしてフォトグラムの作品は本当に光を閉じ込めたかのように輝きを放っていた。「写真は光の造形である」というモホイ=ナジの論文のタイトルを実際にとてもよく感じることが出来るものだった。光を描くことを重視したモホイ=ナジの芸術に対する姿勢が感じられた。
絵画「抽象的コンポジション」は余分なものがそぎ落とされていて、赤い小さな長方形のアクセントがきいていて、見ていてすがすがしい気持ちになれた。
いくつかの異なる写真を組み合わせて構成するフォトプラスティックの一連の作品は、構成主義の面目躍如といった感じでどれも面白く、軽やかな感じがした。タイトルも「運動すればお腹が空く」というユニークなものもあれば「軍国主義」というシリアスなものもある。でもどちらも軽妙洒脱。
代表作ともいえる動く彫刻「ライト・スペース・モデュレータ」は金属やプラスティックやガラスといった光を反射する滑らかな表面を持った素材を取り入れた彫刻で、新しい素材と技術を創造に最大限に活かした作品だと思った。この彫刻が映し出す光の造形を捉えた映像作品「光の戯れ 黒・白・灰」は、光が次々と形を変え、動き、幻想的な世界をスクリーンいっぱいに映し出していた。そのまばゆいばかりのきらめき、刻々と移り変わる様はまさにモホイ=ナジの創作理念、光と運動による造形を成し遂げたものだと思う。
さらにモホイ=ナジはこの作品を絵画にも展開している。その中では特に赤を基調にした「スペース・モデュレータ CH For R1」は色鮮やかでダイナミック。
当時の先端技術や素材をいち早く取り入れ、時代に即した視覚的表現を試み続けたモホイ=ナジ。その幅広い分野の作品をまとめて見ることのできる回顧展をようやく見ることができて本当に良かった。
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