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    解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコ、アール・ブリュットの巨匠(兵庫県立美術館)

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      3/17に兵庫県立美術館にて「解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコ、アール・ブリュットの巨匠」展を鑑賞しました。この展覧会は2012年3月25日まで兵庫県立美術館で開催された後、2012年5月26日から7月16日まで広島市現代美術館にて開催されます。いま内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。





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      この展覧会のフライヤーに載っていた2人の名前、ルボシュ・プルニーとアンナ・ゼマーンコヴァー。どこかで見たことのある名前だと思っていたら、2008年に滋賀県立近代美術館で開催された「アール・ブリュット ―パリ、abcdコレクションより―」という展覧会で2人の作品を見て、当時とても印象に残ったのだった(当時の感想はこちら)。そんなプルニー&ゼマーンコヴァーが今度は本格的に紹介されるという。プルニーが手がける解剖学的な作品は私が一時期人体に興味を持っていたこともあり、またゼマーンコヴァーの不思議な作品は私が現在興味がある「花」のようでもあるので、鑑賞しに行くことにした。

      プルニーは幼少期のころから絵を描くことと解剖に興味を持ち、展示されている作品も解剖学のイメージを展開したものがほとんどだが、解剖されていない人の顔や身体をコラージュして重ね合わせたり、文章を書き込んだりすることによって私的な世界を描き出していた。それは解剖された人体というおどろおどろしいモチーフを描いていながら、くっきりとした赤や青や黒の線で細密に描かれているからか、画面に透明さを感じて美しいと思った。またプルニーは血液を使った作品「無題」(これも解剖された人体が力強く描かれ、身体につながる赤い十字架と黒い子宮が目に強く焼きつく)や、臍のゴマを使った作品「臍の雑誌第2号」、父や母の遺骨灰を使った「父」「母」といった、実際の人体の一部を使った作品も制作しており、その行為はプルニーが作品とつながりを保ち続けたい気持ちの表れなのではないか、と私は思ったのであった。

      ゼマーンコヴァーはどの作品もある種の静かなうねりを感じさせ、そこには母性がこめられているようであった。しかしながら多くの作品に見られるおしべやめしべが長く伸びた花のような形態は単なる穏やかな母性ではなく、性的なものを暗示しているようでもあった。その花のような形態は細部まで文様のように描き込まれ、熱帯にでも生えていそうでどこにもない幻視的な「花」が並んでいた。暗がりに灯をともしたような背景に反復からなる花のようなものが浮かび上がる「私たちのルチンカの誕生」や、羽のような、長い葉のようなものが絡み合う「日曜の朝の花」は穏やかさと不思議さが同居しているようで私の好きな絵である。

      会場ではアール・ブリュットの作り手や歴史を紹介する映画「天空の赤−アール・ブリュット試論」も上映されていたのですべて見た。気になったことはある関係者の言葉「狂気がなければそれは芸術ではない」など、“狂気”や“狂人”といった言葉があまりにも強調されていたことだ。私は色々とアール・ブリュットの作品を見てきたが、“狂気”とは違うニュアンスのものが感じられる作品も多数あると思う。今回のプルニーとゼマーンコヴァーにしても、“狂気”とは違うものを感じる。映画で別の関係者は「アール・ブリュットは言葉でいえば訛りが強い者」と言っていたが、こちらの方が私の実感に近い。

      プルニーとゼマーンコヴァーは、私にとっては間違いなく芸術家である。そう思った展覧会であった。

      JUGEMテーマ:展覧会
       


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