6/24に兵庫県立美術館にて「カンディンスキーと青騎士」展を鑑賞しましたので感想を書きます。この展覧会は2011/6/26まで兵庫県立美術館にて開催された後、山口県立美術館で2011/7/5から9/4まで開催されます。
いま詳しい内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。
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「青騎士」とは20世紀初頭のミュンヘンにおいて若き日のヴァシリー・カンディンスキーを中心に立ち上げられた革新的芸術運動である。この展覧会ではカンディンスキーを中心に、青騎士の主要メンバーの芸術が発展していく軌跡を追っていた。特に抽象絵画の創始者の1人とされるカンディンスキーに関しては、彼の抽象へと向かうプロセスを追うことができて興味深かった。
カンディンスキーは初期の色彩実験として彼が「小さな油彩習作」と呼んだ油彩風景画を描いており、ペインティングナイフを用いた力強いタッチとはっきりとした色彩に試行錯誤の跡がうかがえた。その後ムルナウでの滞在での精力的な制作を経て、1909年から抽象性の高い作品を描き始めた。「山」は赤、青、緑と山が鮮やかな色で塗り分けられているのが見ていて心地よい。そして1911年はカンディンスキーの画業にとって大きな転機を迎えた。まず盟友となるフランツ・マルクとの出会いがあり(1909年にカンディンスキーらはミュンヘン新芸術家協会を結成し、第1回展を見に来て感銘を受けたのがフランツ・マルクである)、それからアーノルト・シェーンベルクのコンサートに感銘を受けたと言われる記念碑的作品「印象III〈コンサート〉」が描かれた。圧倒的な黄色の色面と多彩な色斑が迫力のある作品である。さらにカンディンスキーが出品しようとしていた作品が落選させられてすぐさま協会を脱退し、その年の12月18日に第1回青騎士展を開催したのである。
カンディンスキーの抽象絵画に到達する革新性は言うまでもないが、ほかにも青騎士に集まった芸術家は個性たっぷりであった。カンディンスキーと親密な関係にあったガブリエーレ・ミュンターは太い輪郭線で縁取るクロワゾニスムを用いて、内容を感じて少しでも抽象化し、ものごとの核心を描き出していた。のびやかな筆致による大らかな表現が印象的であった。またアレクセイ・ヤウレンスキーは詳細を省き、一層主観的に世界を把握し、表現しようという意志がうかがえた。マリアンネ・フォン・ヴェレフキンは内面表現に重きをおき、印象的な瞳を描いていた。フランツ・マルクは素朴な表現から作品ごとに鮮やかさ・鋭さを増していき、アウグスト・マッケは気品溢れるフォルムの作品を残していた。またのちに詩的な作品を多く残したパウル・クレーが第2回青騎士展に参加したことも忘れてはならない。
なんというか、芸術の革命を起こそうという熱気が静かに作品群から溢れ、芸術家たちの思いが伝わってくるような、そんな展覧会だった。
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