本日4/27、国立国際美術館にてアンドレアス・グルスキー展を鑑賞しました。この展覧会は5/11まで国立国際美術館で開催中です。いま詳しい内容や批評を読みたくない人はここから下は読まないでください。
---------------------------------
ドイツの現代写真を代表する写真家、アンドレアス・グルスキー(1955-)は、私が以前あちこちの美術館やギャラリーで現代写真も見ていたため、その流れでグルスキーの写真も見たことがある。その時の印象は、スケールが大きいというか、異様な世界が広がっている感じがした。今回日本初の個展ということで、あの極度に大きくしかも細部まで均質に写っている写真が一堂に会するのかと思うと是非見たいと思った。
展示室の中は、制作年の時系列順ではなく、ある意図を持って並べられた展示であった。おそらくそれは、グルスキーの作品でも年代ごと、テーマごとによって表現に違いがあって、それを混ぜることによって展覧会としてのインパクトを出そうとしているからではないかと思った。
例えば、以前見たことがあった「99セント」。99セントの商品で埋め尽くされた売り場をまるまる写した大画面の中に、菓子などのパッケージの細部は明瞭に見えるという、まさにグルスキー独特の視覚表現である。これは消費社会を象徴し、ところどころに見える客の頭はまるで消費社会に飲み込まれそうである。
また、これも代表作である「東京証券取引所」では所内の多忙な人たちの集まりがおさめられている。人々のほとんどは黒と白のスーツで、私はずいぶん日本人ぽいなあと思った。同じく展示されていた「シカゴ商品取引所III」はスーツがカラフルで、似たような場所なのに随分雰囲気が違うのだなと感じた。
その他、大牧場の牛の群れの作品や、書きなおしたのかと思うぐらい掲示板の文字がすべて鮮明に読める空港の作品など、独自の世界と言える作品が並んでいた一方で、最近のシリーズである「バンコク」シリーズは川の水面の模様を濁った川の中にくっきりと浮かび上がらせ、抽象絵画のような趣である。色とかはデジタル技術で加工しているなというのがわかるが、これも単なる写真を超えた視覚芸術を創ろうとしたのが伝わる。私は今回の展示では「バンコク」シリーズが好きかな、と思った。
グルスキーは作品を創るにあたってデジタル技術を駆使しているようで、単なる写真を超えようというのがわかる。かといって「バンコク」シリーズが抽象画のようであっても、絵画とは明らかに違う。いわば世界の再構築をあのスケールの大きさで緻密におこなっているのが驚きである。
単なる絵画、単なる写真。展覧会を観終わって、やはりこれだけでは人の心を打たないのだなと考え続けた。今回私は、図録の小さい判型では独特の視覚表現がわかりにくく、図録を買わなかったのだが、代わりに「いつも私ならではの表現を追求すること」を常に心に留めておき、実践しようと思ったのだった。
JUGEMテーマ:
展覧会