9/9に兵庫県立美術館にて「バーン=ジョーンズ展−英国19世紀末に咲いた華−」を鑑賞しました。この展覧会は2012/10/14まで兵庫県立美術館にて開催されたあと、2012/10/23から12/9まで郡山市立美術館に巡回します。いま内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。
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最初バーン=ジョーンズという名前を聞いた時はピンとこなかったのだが、生涯の友ウィリアム・モリスとの共同事業によって数々の装飾デザインの仕事をした人だと知り、また某所でもらった展覧会のチラシを見てなんだか物語が感じられる絵だなあと思い、私にないものがこれらの絵の中に沢山あるに違いないと思い見に行くことにした。
エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)は19世紀末のイギリス唯美主義美術を代表する画家であり、師ロセッティらが結成したラファエル前派の系譜に連なる最後の巨匠であるとのこと。ギリシャ神話や中世文学、聖書などを題材に、繊細で装飾的な絵画を描き出している。
中でも見ごたえがあったのは、やはり連作の絵である。
「闘い:龍を退治する聖ゲオルギウス」―連作「聖ゲオルギウス」(全7作品中の第6)は、獰猛な龍、それと闘う勇ましい聖者、そばで見つめる王女の不安げな表情と、心ひかれる劇的な画風の作品である。
「泉の傍らに眠るプシュケを見つけるクピド」―連作「クピドとプシュケ」(パレス・グリーン壁画)は、表題のシーンをやわらかいタッチで、ロマンチックに描き上げており、神話の世界に引き込まれるようだ。
「ピグマリオンと彫像」の連作は4点展示されており、物語を見事に絵画で具現化している。「ピグマリオンと彫像―《恋心》」では物思いにふけるピグマリオンの姿が繊細に描かれ、もの静かな人柄なのではないかと想像させる。「ピグマリオンと彫像―《成就》」で描かれた女性の表情がなんとなく硬いのは、彫像から生身の人間に変わったからかなどと考えたり。
「果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス」―連作「ペルセウス」は、主題のドラマ性もあってか大変迫力を感じた。巨大な怪物と闘うペルセウスは重厚な色使いで、その横に立つアンドロメダの裸身の眩さと強いコントラストをなしている。
そして「眠り姫」―連作「いばら姫」は、4人の女性がみな異なるポーズで眠っており、花や布のひだなどが装飾性を高めている。静かな、時が止まったようなシーンを見事に描いていた。ちなみにバーン=ジョーンズはおよそ30年にわたって「眠り姫」にまつわる主題を繰り返し描き続けたそうで、この展覧会では「王宮の中庭・習作」―連作「いばら姫」という6点の習作も展示されていたが、いずれも独立した作品ともとれる完成度の高い習作で、この主題に対する強いこだわりを感じた。
このほか、運命の女神と彼女が回す車輪、車輪に身をゆだねる3人の男を描いて運命という概念をイメージ化した「運命の車輪」が、その重厚さ、テーマともに深く心に残った。
また「東方の三博士の礼拝」のタペストリーも緻密な作りで、色彩が鮮やかだし、周りには花もいっぱい咲いていて美しいなあと思った。
展示では数多くの習作も並べられ、綿密に描写を繰り返し作品を創り上げていったのだなと想像した。絵づくりというか、細密な描写や構図のとり方など、いかに美しいものを創るか、色々勉強になった展覧会だった。
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